Single point mooring system

係留系における新コンセプト

 
  浮体式洋上風力。メリットは沢山あるが、実用化にはまだまだ解決しなくてはならないことも多い。この研究ではそういった問題を少しでも解決出来るよう、係留系には新しいコンセプトを導入している。
 この機構に関する基礎研究は横浜国立大学 村井基彦准教授と大阪府立大学 二瓶泰範の共同研究で実施されたものである。下記で公表されている。 
   ・一点係留型浮体式風車の風向追従に関する実験的研究、日本船舶海洋工学会講演会論文集、村井基彦、二瓶泰範、松浦みどり、高橋健作、2014年5月
  ・新形式一点係留を用いた浮体式洋上風力発電に関する研究、大阪府立大学大学院工学研究科海洋システム工学分野修士論文、松浦みどり、平成25年度
詳しくは下に記すが上記の研究は基本的な機構を研究したに過ぎない。2014度の実海域試験ではここから更に発展させ、電気ケーブル、チェーンを用い、実用化を念頭に置いている。
 

平成25年度中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業に係る補助金事業とその他補助金

  実海域で使用する浮体式洋上風車の試作・開発は東京計測株式会社(代表取締役 神田信之氏)が受けている補助金(平成25年度中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業に係る補助)により行われている。(事業計画名:漁業用いけすの電気エネルギー自給の為の浮体式洋上風車の研究と開発)
 電気関係は本プロジェクトにおいて非常に重要で、東京計測 神田信之氏により設計が行われている。また、ブレードおよびナセルの設計・試作は(株)三興、浮力体及び係留装置設計は(株)マリーナ開発設計、風車の安全性・性能調査に関しては大阪府立大学が開発を補助している。
 ・東京計測 神田信之氏
が開発リーダーとなり、
 ・大阪府立大学 二瓶・松田(4回生)
 ・マリーナ開発設計 高岩千人博士
 ・北村技術研究所 技術士 北村眞一氏
を開発補助メンバーとして実験データ共有、設計データ共有、共同試験を行い開発が進められている。

機械部品 2015.01.01 uploaded

発電機

 今回このプロジェクトで使用する発電機は永久磁石多極型発電機だ。近年、ギアボックストラブルの根本的な解決に向けてこの形式の発電機が開発されている。我々もこの形式の発電機を採用することとした。コイルは学生による手巻きの為、精度はあまり良くは無いが、自分たちの勉強の為にも自製した。
 発電性能は発電性能試験機によって調べることが出来る。本発電性能試験機は回転数を自由に設定することが出来、回路に抵抗を組み入れた際の、トルク、電圧、電流の計測が可能である。

実験で使ったコイル。自作です!


実験で使った電磁鋼板。自作です!


発電機。自作です!


発電性能試験。


風車ブレードとナセル

ブレード製作中。


風車内の部品類。


ナセル。


タワー・浮体

SPAR浮体。


バラスト


SPAR部に浮力体取り付け。


SPAR部に浮力体取り付け。


 

係留システム

係留取り付け点。


アンカー。


係留系。


係留系、電力ケーブル。


 

水槽試験 第1回2015.01.01 uploaded

 個々の部品の製作が終われば組み上げて水槽試験を行う。今回一番のポイントは我々が考えている新しい係留系が機能するかどうかだ。
 昨年の試験で、小型模型を用いての試験で回転機構を確認してきた。しかし、この小型模型では、発電はもとより、回転機構はスイベル、係留ラインはステンレスワイヤーであり、基本的な機構を確認したに過ぎない。この回転機構を実証することが求められる。すなわち、電気ケーブル、スリップリング、係留チェーン系、回転材の具体的なモデル提案と浮体の回転可否の検証が必要である。
 研究の一つ大きなポイントは既に述べた回転機構モデルの考案といえる。しかし、このプロジェクトでは実海域において長期間の試験を実施する。あらゆる側面から浮体式洋上風力発電の実証を行うものである。発電性能、耐久性、荒天下での挙動を調査するものだ。水槽試験、風洞試験では可能な限り調査を行うこととした。

計測中です。


風車をクレーンで搭載。


風車搭載完了。


風車内部。


 

浮体式洋上風力の実海域へのインストール

 本プロジェクトにおける浮体式洋上風車は2月上旬から3月末にかけて実海域試験が行われる。研究テーマは

  • 安全なインストール及び撤去が可能かどうか
  • 浮体の安定性はどうか
  • 新しい一点係留方式の機能性
  • 製作した風車の発電効率
  • 風車のピッチコントロールが浮体動揺に与える影響
  • 漁業用いけす等のマイクログリッドへの導入の検討

となる。
 2015年2月4日より浮体式洋上風車のインストールを行った。インストールに携わって下さった方々は、(株)ベリングハムハーバーマネジメント 小田健次氏、シーガル 久川 俊一氏。お二方にはインストール、アンインストールについて技術指導を頂くとともに、実際の施工、撤去について検討して頂いている。
 設置手順を簡単に書くと以下のようになる。

  • 実際のアンカーの位置決め
  • 作業台船のインストール
  • 浮体のインストール
  • 海上での風車の取り付け
  • 作業台船への物資搭載
  • アンカーインストール
  • アンカーの把駐
  • 作業台船と浮体式風車の曳航
  • 浮体式風車のアンカリング
  • 作業台船との切り離し
  • 風車の調整

設置工事は凡そ2日間程度かけて行われた。

試験サイト。


作業台船。


浮体のつり上げ。


風車取り付け。


係留索。


電気ケーブル。


アンカーインストール。


アンカー把駐。


係留取り付け点。


曳航。


アンカリング。


水中の様子。


発電性能・係留の耐久性

本プロジェクトにおける浮体式風車の電気系統の流れについて、

  • 風車プロペラの回転
  • 多極型同期発電機発電(タワー下部)
  • コンバーターにより直流に(タワー下部)
  • スリップリング(係留点上部)
  • 海底ケーブル(海中)
  • 計測室により負荷抵抗付与(計測室)

となっている。
 至ってシンプルである。上にも記したが発電機は自作であるので、どこで効率が落ちるかについても分かっている。性能向上は今後の課題である。

今後

本研究開発は、今後さらなる発展を目指し研究開発を続ける。また、本研究開発で得られた知見は下記で公表している。

  • Research and development about the mechanisms of a single point mooring system for offshore wind turbines, Yasunori Nihei et al., 2018, Ocean Engineering, ELSEVIER, Click here to get the paper
  • 浮体式洋上風車に適した一点係留の研究と開発、松田 有祐、二瓶 泰範、北村 眞一、 高岩 千人、神田 信之、平成27年度日本船舶海洋工学会春季講演会、2015、5月
  • 一点係留機構を用いた浮体式洋上風車の実海域試験-施工、モニタリング、撤去について-、二瓶 泰範、神田 信之、高岩 千人、北村 眞一、小川 健次、久川 俊一、増山 豊、平成27年度日本船舶海洋工学会春季講演会、2015、5月

 
 近年、一点係留を用いた浮体式風車が検討されている。この技術が大型風車でも実用化されるように技術提供をしていきたい。
NEDOホームページより

EOLINK (フランスホームページより)