Project Archives Ⅰ

Short Study AbroadLinkIcon(coming soon)

  研究室で研究生活が終われば、企業で仕事をするわけだが、海洋開発企業、重工業関連企業、造船会社において海外での経験はいつかきっと役に立つだろう。しかし、海外で語学を学ぶだけでは勿体ない。折角なら、海外で将来同じ様な道を目指す若者たちと机を横にし研究生活を送ってはどうだろうか。

 希望する学生には自分で短期留学先の研究者を探してもらい、お金の工面も自分で行い、およそ2ヶ月間行ってもらっている。そんなプロジェクトを紹介する。

2014年度 浮体式洋上風力発電の実海域試験プロジェクト

 
試験水槽での試験はとても大切だ。でも、本当にそれだけで終わってしまっても良いのだろうか。水槽試験は自然環境のほんの一部だけを切り出してきて表現しているに過ぎないと思う。水槽の試験だけで終わってしまう研究だったらそれは絶対物足りないし、本来の最終目的地ではないと思う。
 この研究は浮体風車の実機を使って海上試験するというものだ。
 実機というからには小規模ながら発電も行う。実際に発電するというリアリティーがあってこそ、次の明確な研究の目的も生まれるであろう。折角発電したものは海でそのまま漁業とかで使えないだろうか。そんな形で人の役に立つ研究にしたいと考えている。
 少し話が変わるかもしれないが、我が国では原子力エネルギーに関する問題が取り沙汰されている。恥ずかしいことに東京の電気が福島からも来ていたことを私はあの事故で初めて知った。人は巨大なシステムの中で利便性・経済性を享受するうちに知らなくても済むことは考えなくなってしまうのかもしれない。電気はどこから来ているのか、食はどこから来ているのか、どうやって作られるのか。様々なことに対してあまりにもリアリティーを失っているのではないだだろうか。そうなってしまっては本質を考える上で絶対に良くない。
 この研究は海上で発電そのものを行う。リアリティーはまさにそこにある。どうやったらより発電できるのか、どうやったら壊れにくくできるのか、どうやったら耐久性を上げられるのか、その全てが研究になり得る。担当した君がそこで生み出すエネルギーの立役者だ。作ったエネルギーをどこで使うか、漁業で使ってもらうことを考えてもよい。
 海洋開発プロジェクトはプロジェクトの企画・立案に始まり、プロジェクトを遂行するためのデバイスの研究と開発、運用、維持管理といった本当に色々なことを学び考えなくてはならない。そしてそういうプロジェクトを進める若い人材がわが国には絶対に必要である。この研究は開発協力者に色々と協力してもらいながら一緒に研究と開発を行う。無事、卒業論文を仕上げた君は総合工学に携わる学生として恐らくは初めて海上での長期発電試験を実施した学生になるであろう。その研究はやはり研究のための研究では絶対にないはずだ。是非、この千載一遇のチャンスを生かしてエネルギーを作るということについて考えるきっかけにして欲しい。

2014年度 浮体式洋上風力のプロペラコントロール制御方法と浮体動揺に関する研究

  プロペラ型の風車というものは風が強くなってくるとピッチコントロールといって風を逃すようにブレードの迎角をコントロールする。これによって強風の時に風を受けすぎないようにしている。実物の風車はとても重いように思うかもしれない。しかし、模型の縮尺にしてみて分かるが、その大きさの割にもの凄く軽い。当然ながら、巨大構造物を作る前にはスケール模型を作り色んなテストを行う。だが、ピッチコントロール制御機構までを組み込んだ試験というのは重さ制限からなかなかに困難である。世界的な研究機関でもこのような制御機構を組み込んだ模型はほとんど作られていないのが現状だ。このプロジェクトは2013年4月に始まった。試験機初号機(開発番号KS-01)は我々の研究室の学生によって設計され、製作された。そしてピッチ制御をした水槽試験を既に実施するに至っている。さらに水槽試験での運動や構造に生じる荷重は数値計算により比較検証を実施している。

 2013年8月からは、ものづくりのプロにも加わってもらい、更なる超軽量・超小型化実現を目標にしている(経済産業省プロジェクト採択)。スケール比を合わせた試験が可能になったら、スケール模型試験で様々な面での実機性能向上に一役買うことができるだろう。またピッチコントロールをすることで浮体が思わぬ挙動を示すこともあるだろう。そういう現象が未然に発見出来たら良いなと思う。

 さて、この担当を希望する君は一体何を学べるのだろう。何が身につくのだろう。これが一番大切だと思う。

 完成した初号機だが、更なる改良をすべくコントロール可能な風車の次号機を開発する。残念ながら浮体はまだ無い。つまり次号機のための浮体モデル開発が必要となり、浮体動揺の基礎知識を学び身につけることができる。さらに、コントロール可能ではあるが、コントロール信号を作るのは君自身だ。すなわち、君は制御のことを学び身につけることができる。今は何も分からなくても心配はいらない。はじめは皆そうだから。人一倍努力することを惜しまなければ必ず身につけられる。

 この研究は、浮体運動、制御、振動、メカといった君がエンジニアになった時に必ずや役に立つ様々なことを学ぶことができるのだ。この知識をフル活用して浮体式洋上風力という研究を進めて世のため人のになることを是非とも発見してほしい。
研究担当者

水上 裕貴(2014年度4回生)

研究協力者

大阪大学 飯島一博先生(船舶海洋工学)、大阪府立大学 原尚之先生(電気情報)、 Campinas 大学 Celso Morooka先生(船舶海洋工学)

開発協力者

株式会社 三興

2012年度 浮体式洋上風力発電に関わる4大学連携プロジェクト

  洋上風力発電施設の多面展開は、地球温暖化ガス対策や原子力関連技術の問題から鑑みても今後大きく商用利用が進む分野であると考えられる。近年の陸上風車のスペック向上は目覚ましく、5MWや7MWクラスの超巨大風車が開発され、その技術を洋上に展開し欧州では少しずつ着底式の洋上風力発電施設が商用運転を開始している。今後の洋上風力発電は着底のみならず浮体式も商用で利用されていくことが考えられる。この初期の重要な局面において浮体式洋上風力発電の安全基準等を定めなければならないと考える。
 本研究において,Spar,TLP,セミサブといった様々な工法に対し、実験や数値計算を横断的に実施し、得られるデータを通して、洋上風力発電の操業に向けて様々な観点から考慮するべき問題について解決策・提言等を含めて取り纏める。
 このプロジェクトでは横浜国立大学、日本大学、大阪大学、大阪府立大学で共同で実施され、卒業研究、修士研究の一環としても取り組まれた。日頃、自分たちの大学の研究室の中で過ごすことが多い学生が、他大学の学生と共同で行った模型製作、実験、解析、考察は珍しい取り組みと言える。

2011年度 TLP型浮体式洋上風力発電の弾性応答に関する研究

  5MWクラスの発電をする浮体式風車の場合、浮体からタワーのトップまでの高さはおよそ80m。非常に高いところに風車の回転中心がある。また浮体は係留系とともに揺れるわけだから発電している時の曲げ荷重なんかは結構大きそうだ。そう思って調査を開始したプロジェクトがこの研究プロジェクトだ。
 スケール模型を製作した後、試験を行ってみて、予期せぬところで振動が生じた。実験データを解析してみるとその振動現象が生じた理由は風車の回転慣性の影響ではないかというところに行き着いた。そこで風車の回転影響とタワーの曲げ振動と係留浮体の連成応答方程式を立て、この現象を評価することを試みた。